特定調停と任意整理の違いを徹底解説。自分に合った債務整理を選ぼう
債務整理の手続きの中でも、借金を整理し返済の減額を図る方法として、特定調停と任意整理の2つがあります。どちらも借金の減額を図る点は共通しているので、どちらの方法で債務整理を行うか迷いやすいでしょう。
実際は、特定調停と任意整理には、裁判所の関与や取立停止時期、強制執行の有無などの違いも多くあり、違いを理解して自分に合った手続きを選ぶことが大切です。
本記事では、特定調停と任意整理について、共通点や違い、それぞれのメリット・デメリット、向いている人物像などを詳しく解説します。特定調停と任意整理で悩んでいる方は、検討に役立ててみてください。
特定調停・任意整理とは
特定調停と任意整理のどちらが自分に合うかを選ぶためには、まず特定調停とは何か、任意整理とは何かを理解する必要があります。それぞれどのような債務整理の方法かを説明していきます。
特定調停とは
特定調停は、債務整理の方法のひとつであり、民事調停の一種でもあります。債務者の生活や事業の再生を目指し、債権者との交渉を行い、返済額の見直しを図ります。自己破産のように、財産をすべて失うのではなく、返済の負担を軽減するのが目的です。
特定調停の特徴には、個人で申立ができることが挙げられます。借金に悩む人や法律知識がない人でも、申立て書類や債権者一覧表などの書類作成をすれば最低2回の出廷で債務整理が可能です。弁護士など専門家に依頼できない人でも債務整理できるようにと整えられた制度でもあり、手続きを始めやすくなっています。
任意整理とは
任意整理は、特定調停と同じく、債務者の返済の負担を減らすために行われる債務整理の手続きです。任意整理を申し立てる場合は、個人ではなく、弁護士や司法書士に依頼する必要があり、弁護士・司法書士が債務者の代理となって、債権者と和解交渉を行います。あくまで個人間の和解交渉の代理を立てている形なので、私的な交渉となります。
特定調停と任意整理で借金が減る仕組みは、過払い金の引き直し計算を活用しています。利息制限法によって定められた金利の上限15~20%を超えて支払いをしていた場合には過払い金が発生します。この発生した過払い金分は借金から減額することが可能です。発生した過払い金の額次第では大幅に借金を減らすことも可能です。
特定調停と任意整理に共通するポイント
特定調停と任意整理は、異なる債務整理の手続きですが、共通点がいくつかあります。どちらも交渉で減額することや算出方法、返済期間・返済方法など、共通点をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
話し合いによって借金減額を交渉する
特定調停と任意整理はどちらも借金を帳消しにするのではなく、話し合いによって減額を交渉する債務整理です。特定調停の場合は簡易裁判所で選任された調停委員会が、任意整理の場合は弁護士・司法書士などの専門家が債権者との交渉を行います。債務者の現状や返済能力を把握し、債権者と調整することで、借金の減額を可能にします。
債務整理といえば、自己破産をイメージすることもあるでしょう。自己破産は、裁判所に手続きを行い、借金を帳消しにする債務整理であり、債権者との交渉・借金の減額方法の両面で、特定調停と任意整理との違いがあります。
借金の減額幅の算出方法が同じ
特定調停と任意整理は、共通して先ほど紹介した利息制限法と出資法に基づく引き直し計算によって、借金の減額幅を算出します。払いすぎた「グレーゾーン金利」と呼ばれる金利を明らかにし、本来設定されるべき金利に合った返済額に減額されます。
そのため、借金額や債務状況が同じの場合、特定調停と任意整理では減額幅には差が出ないことになります。どちらが借金の減額幅が大きいかでは選ぶことはできません。
ただし、引き直し計算によって明らかになった過払い金の扱いには違いがあります。後で詳しく解説しますが、債務整理の手続き内で過払い金を取り戻せる可能性があるのは任意整理のみです。
債権者を選ぶことで財産を維持しつつ整理を図れる
自己破産は一定以上の財産を失い、すべての債務を整理する必要がありますが、特定調停と任意整理では債権者を選んで手続きすることができます。債務を抱える方には、複数の債権者から借金している方も多く、効率よく債務を減らしたい方や自己破産すると生活に支障があるという場合に役立ちます。
例えば、住宅ローンや自動車ローンを組み、住宅・自動車を保有している場合、債務整理に対象になると暮らしに困るでしょう。特定調停と任意整理では、住宅ローン・自動車ローンなどを除いて、他の債権者に対して申立ができます。
財産を維持しながら債務整理を進めることができるので、債務者の事情に合わせた借金の減額が可能です。
返済期間と返済方法が同じ
返済期間と返済方法についても同じです。特定調停と任意整理の返済期間は、原則3年と定められていて、最大でも5年までの返済が求められます。返済方法は、1ヵ月1回の分割払いです。
原則3年間の返済期間は、特定調停と任意整理をする条件でもあります。継続収入がないなどの理由で、5年かかっても返済できる見込みがない場合は特定調停と任意整理は認められません。個人再生や自己破産といった別の債務整理をする必要があります。
資格制限や職業制限がない
自己破産を行うと破産手続きをしている間、就業できなくなる資格や職種があります。具体的には、弁護士・公認会計士・司法書士・税理士・警備員・生命保険の外交員などが挙げられます。
特定調停や任意整理、個人再生の場合は、資格制限や職業制限はありません。債務整理中やその後にも影響がないので、働きながらの債務整理が可能です。
特定調停と任意整理にある7つの違い
特定調停と任意整理には、共通点以上に相違点が多くあります。申立先から返済が滞ったときの対応まで、細かい違いも存在します。特定調停と任意整理のどちらを選ぶかの基準にもなるので、しっかりと違いを理解していきましょう。
裁判所を介するかどうか
特定調停と任意整理では、裁判所を挟むかに違いがあります。特定調停は、債務者個人が簡易裁判所に調停を申し立てることで始まります。裁判所を介する分、債務整理に関わる人が多く、債務者と債権者に加えて、調停委員会、裁判官、裁判所書記官なども関わります。調停にあたっては、調停委員会が中心になって債権者との間を取り持ってくれるので、はじめての債務整理でも安心して進められるでしょう。
一方、任意整理は、裁判所を介さず、弁護士・司法書士などの専門家を代理に立てて手続きを行います。弁護士などを立てずに、債務者と債権者で交渉を行うことも可能ですが、一般的ではありません。公的機関である裁判所を通さないので、任意整理は私的な債務整理と言うことができます。
手続きに必要な費用・手間
手続きに必要な費用や手間は、特定調停と任意整理にある大きな違いです。まず手続きに必要な費用を見ていくと、特定調停は債権者1社あたり500円で、郵便切手費用を含めても数千円で申立できます。任意整理は、通常、弁護士・司法書士などの専門家に代理を依頼するので、依頼費用がかかります。依頼費用には、着手金や成功報酬などが含まれ、数万円以上になるのが一般的です。
次に手続きにかかる手間ですが、任意整理は費用が高くなる分、手間は少なくなります。法律のプロに交渉を任せられるので、債務者の負担はほとんどありません。一方、特定調停は個人で申立を行う必要があり、書類作成や出廷に時間と手間がかかります。
費用の安さでは特定調停、手続きのしやすさでは任意整理にメリットがあるので、どちらを優先するのかで自分に合った方法を選択しましょう。
法的拘束力があるか
裁判所を介するかどうかに関わって、法的拘束力にも違いがあります。特定調停は、簡易裁判所を介して調停が成立した後に、法的拘束力を持った調停調書を作成します。調停調書で取り決められた内容には拘束力があるので、約束が守られなかったときに強制執行などの然るべき措置が取られます。
特定調停に対して、任意整理は裁判所を介さず、法律のプロを通しているものの、私人間の交渉であるので、任意整理成立後に作成される和解書は法的拘束力を持ちません。法にのっとった強制執行などを取ることは不可能です。
過払い金を取り戻せるか
特定調停と任意整理の違いで、重要なのが過払い金請求ができるかです。任意整理では、手続きの中で過払い金請求をすることができます。引き直し計算によって明らかになった過払い金を借金から減額するだけでなく、過払い金として取り戻すことも可能です。そのため、借金の減額以上に返済の負担が軽減される可能性もあります。
残念ながら、特定調停では過払い金請求をすることはできません。過払い金を多く見込める方は、特定調停とは別に過払い金請求訴訟を起こす必要があります。弁護士や司法書士に依頼することで手続きができますが、依頼の手間や費用が気になる方は、任意整理時に請求するのがおすすめです。
取り立てが停止するタイミング
もう一つ忘れてはいけない違いが取り立てが停止するタイミングです。特定調停の場合は、申立を行った時点で取り立てがストップします。個人で申し立てをする必要があり、書類作成が進まない方、平日に簡易裁判所に行く時間がない方は、その間取り立てが続くので、借金額が膨らむ可能性があります。
一方、任意整理は、弁護士などの専門家に依頼した時点で取り立てが止まります。任意整理の開始とともにただちに止まるので、余計な債務が発生する心配がありません。とにかく早く債務整理を始めたい、これ以上返済を増やしたくない人には、任意整理が最適です。
特定調停は手続き費用をおさえたい方におすすめ
特定調停の特徴は、任意整理に比べて、手続き費用が安いので、少ない費用で債務整理を行いたい方におすすめです。債権者1社あたり500円・郵便切手代数百円で手続きができ、複数社の債権者がいた場合でも任意整理よりも費用を抑えられます。
また、特定調停は無職でも、簡易裁判所に出廷するまでに継続収入があれば、申立可能です。申立によって取り立ても止められるので、任意整理に充てる費用を捻出できないという方にも、特定調停が適しています。
任意整理は時間・手間なく債務整理したい方におすすめ
任意整理は、時間や手間をかけたくない方におすすめです。依頼費用がかかるものの、弁護士や司法書士に代理を依頼するだけで、債権者との和解交渉を任せることができます。弁護士や司法書士に依頼後ただちに取り立てが止まるので、債務を増やさない方法としても効果的です。
任意整理に対して、時間や手間がかかる特定調停の流れをここで理解しておきましょう。特定調停は、個人で簡易裁判所に申し立てることが一般的で、まず書類作成・申立をする必要があります。必要な書類は、「特定調停申立書」「財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料」「関係権利者一覧表」、「資格証明書」の4つです。書類への記入ではなく、明細などの発行も必要で、作成・入手に時間・手間がかかるでしょう。
書類作成・申立を済ませてからも手間があります。申立を受理された後に通知される最低2回の調停期日に簡易裁判所に出廷しなくてはいけません。1回目は返済計画案の作成、2回目は債権者との交渉となります。無事に折り合いがつき、調停が成立して、調停調書が作成されてやっと手続き完了です。任意整理に比べて、特定調停は工程が多いので、時間・手間が気になる方は任意整理がおすすめです。
強制執行停止は、特定調停でしかできない
特定調停には、法的拘束力があるため、返済を怠り滞った場合には、債権者による強制執行で差し押さえをされる可能性があります。債務者に非があるならば、強制執行を免れることはできませんが、債権者による不当な強制執行が行われる場合もあるでしょう。
その場合、特定調停のみ、強制執行の停止を申し立てることが可能です。例えば、毎月取り決められた額を返済しているのに給与を差し押さえられた、自動車を差し押さえられたなどの強制執行を止められます。
ただし、特定調停の取り決めとして強制執行の停止が含まれているのではなく、別に強制執行制度を使って、強制執行停止を求めなければいけません。
強制執行停止は、判決を下した裁判所への異議申し立ての申立書、強制執行停止の申立書を両方提出する必要があります。申立が受理されると、裁判所から執行停止命令が下され、強制執行が止まります。
差し押さえをされてしまうと、分割で返済することがままならなくなり、住居を失う場合もあります。不当な強制執行に対しては強制執行停止制度を活用しましょう。
特定調停にあるデメリットに要注意
特定調停には、手続き費用が安いことや強制執行停止ができるなどのメリットがある一方で、任意整理に比べてデメリットが多くあります。特定調停を検討する上で、デメリットも合わせて理解しておきましょう。
取り立てが停止するまでに時間がかかる
特定調停は、取り立て停止のタイミングが申し立て後になります。そのため、個人で特定調停に必要な書類をそろえたり、作成したりしている間にも取り立てが行われます。また簡易裁判所は平日しか空いていないので、日中仕事をしている人は書類の入手や作成・提出するには時間を見つけなくてはならず、困難を極めるでしょう。
申し立てまでの間に取り立てが行われ、債務状況が悪化したり、返済することできずに債権者とトラブルが起きたりして、特定調停が思うように進まないリスクも考えられます。特定調停をする際は、なるべく申し立て前の時間を減らせるように、スケジュール管理やすばやい準備が不可欠です。
過払い金を請求できない
任意整理とは違って、特定調停では過払い金を請求することができません。取り戻せるはずの金利が返ってこないので、期待していた借金の減額を実現できない場合もあります。
過払い金を取り戻す場合は、別途過払い金請求の手続きをする必要があり、特別調停と並行して、弁護士への依頼の手間や時間、費用をかけなくてはいけません。本来、手続き費用の安さが魅力の特定調停ですが、別途費用があかかるのはデメリットでしょう。多額の過払い金が必ず戻ってくるとは限らないので、任意整理内で行う方が効率的かつ経済的な場合もあります。
返済できなくなったときに強制執行が適用される
特定調停と任意整理のどちらとも、返済期間・返済方法を守らなくてはいけませんが、資金繰りがうまくいかず返済が滞る可能性がないとは言えません。任意整理には法的拘束力がないため、強制執行は行えず、債務者に有利な部分があります。
特定調停の場合は、調停調書に法的拘束力があり、債権者は強制執行に踏み切ることが可能です。差し押さえが行われると、返済はもちろん、生活・事業に支障をきたすので、特定調停では対応できず、自己破産に移行しかねません。
遅延損害金が発生する
特定調停と任意整理の違いのひとつとして、遅延損害金の有無があります。任意整理では、和解交渉が長引いたとしても、遅延損害金は発生せず、債務の元本のみの返済だけです。
一方で、特定調停では遅延損害金が発生する場合があります。遅延損害金は、申立によってストップした取り立てに対する賠償で、調停が円滑に進まず長期間に渡ったときに発生します。特定調停はあくまで話し合いの場であり、債権者と意向が合わなければ、長引く可能性は十分にあります。
遅延損害金が発生すると、借金の減額ができたにも関わらず、損害金の支払いによって減額が帳消しになるかもしれません。特定調停を行う場合は、調停委員会と行う返済計画案の作成などで綿密な準備をし、スムーズに話し合いが進むようにしましょう。
交渉が不調に終わることもある
特定調停をすることで、必ず借金が大幅に減額されるとは限りません。利息制限法や出資法で明らかになるグレーゾーン金利をあらかじめ避けている債権者も増えてい、ます。余計に支払っている金利がない場合、借金の減額はあまり期待できません。
また、調停委員会が間に立つものの、債権者と折り合いがつかないこともあるでしょう。債務者のできるだけ借金を減らしたい、債権者のしっかり債務を返済してもらいたいという思いが真っ向から対立すると、妥協点が見つからず、結果的に不調に終わってしまう可能性があります。あらかじめ理解しておかないと、特定調停後の返済計画や生活・事業の予定が立たなくなるので、頭に置いておきましょう。
なお、任意整理も交渉ですので不成立に終わる可能性はありますが、任意整理に応じない貸金業者は少数ですので、ほとんどの場合で任意整理は成立するといえます。
任意整理にあるデメリットも把握しておこう
特定調停に比べると少ないものの、任意整理にもデメリットがあります。大きな違いである手続きにかかる費用などが主なデメリットです。他のデメリットについてもそれぞれ詳しくご説明します。
弁護士など専門家に依頼する費用がかかる
任意整理は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する必要があり、費用がかかります。法律事務所や弁護士・司法書士個人によって費用は異なりますが、数万円かかるのが一般的です。着手金や成功報酬などが別に設定されている場合は、さらに費用がかかるので、料金体系をしっかりリサーチする必要があります。
任意整理は、返済ができない場合だけでなく、返済が滞るかもしれない段階でも手続き可能です。返済が滞るかもしれない場合には、依頼費用を確保できることが予想されますが、すでに返済不能の状態に陥っているならば、専門家への依頼は難しいでしょう。
債権者によっては任意整理できない
任意整理は、あくまで私的な和解交渉なので、債権者は任意整理に応じないという選択も取ることができます。任意整理に応じない債権者からは当然、減額を望めず、借金をそのままの額で返済しなくてはいけません。条件を設定していることもあり、返済が滞ったり、借入期間が長かったりすると、任意整理ができない場合もあります。
また任意整理に応じるものの、協力的ではない債権者も存在します。任意整理では遅延損害金は発生しませんが、期待していた借金の減額が実現しないこともあり得ます。
無職の場合は利用できない
任意整理は、例え弁護士・司法書士に依頼後、就職活動をするとしても、無職であるとそもそも利用が難しいです。返済できることが前提になるので、無職だと弁護士・司法書士が任意整理を引き受けてくれないでしょう。任意整理を選択するためには、まず定職を見つける必要があります。
ただし、両親や親族が代わりに返済を行う場合に限って、例外になります。定職を見つけるのが難しく、代わりに返済をお願いする場合は、弁護士・司法書士にまず相談してみましょう。
なぜ特定調停より任意整理を選択するのか
特定調停と任意整理それぞれにメリット・デメリットがあり、役割が分けられているように感じるでしょう。実際は、任意整理を選ぶ方が多く、特定調停は件数が減っています。なぜ特定調停が選ばれないのか理由を解説していきます。
調停が成立しないケースが増えている
「弁護士法人 アディーレ法律事務所」の調査によると、特定調停の申立件数・成立件数は2004年をピークに2010年時点まで下がり続けています。平均すると、特定調停率はわずか3.1%となっており、借金の減額を実現している方は少ないとわかります。
その後も特定調停が成立しないケースが増えていると言われ、私的交渉である任意整理は件数が明確ではないものの、任意整理を選択する方が多くなっているようです。
特定調停が成立しないケースの理由には、債権者と折り合いがつかない、債権者が債務整理に協力的ではないなどさまざまな理由があります。そもそも特定調停の条件にあてはまらず、個人再生や自己破産といった選択肢をとることもケースに含まれます。
調停委員が専門家ではない場合がある
特定調停に不満を持つ原因は調停委員会にある場合もあります。調停委員会は、必ずしも法律の専門家ではなく、債務整理の知識が不十分なこともあり、過払い金の計算を間違えていたり、返済計画が能力に合っていなかったりするなど、期待する減額や無理のない返済を実現できないかもしれません。
その結果、法律のプロである弁護士・司法書士などに依頼をする任意整理が選択されるようになりつつあります。
過払い金請求ができない
債務者にとって、払いすぎたお金を取り戻したいのが本音でしょう。特定調停では過払い請求ができず、別途手続きが必要になるので、余計に手間がかかります。
借金を減額した上で過払い金を取り戻せる可能性のある任意整理の方が、債務者にメリットが多いです。
個人で手続きするための知識を持っていない
特定調停は、基本的に個人で手続きを行うため、債務整理に関する知識を持っていないと苦労します。書類作成や申立で手こずって債務を余計に増やしてしまったり、調停の場で債務者の有利に進められなかったりして、時間や手間を浪費するだけでなく、減額も期待できません。
任意整理では、時間や手間をかけずに、ただちに取り立てを止めることができ、さらに交渉も任せられます。
特定調停よりも任意整理をおすすめしたい人
はじめて債務整理をする方にとっては、メリット・デメリット、違いだけでは、特定調停と任意整理どちらが適しているかわからない方も多いでしょう。特定調停よりも任意整理をおすすめしたい人をピックアップしたので、ぜひ参考にしてみてください。
手続きをする時間がない人
特定調停は、手続きに時間がかかるだけでなく、平日に簡易裁判所に出廷する必要があります。そのため、日中仕事をしている方など手続きする時間がない方には、特定調停よりも任意整理がおすすめです。任意整理ならば、弁護士・司法書士に和解交渉を一任できるので、時間や手間をかけることなく、債務整理を進められます。
過払い金を取り戻したい人
引き直し計算を行って、過払い金の見込みがある方には、任意整理がおすすめです。任意整理内で過払い金を請求することができ、別途手続きをする手間がなく、より多くの返済の減額を期待できます。 過払い金は2010年以降の借金に対しては発生しませんので、もしも2010年以前に借金をしたことがあるという方は一度弁護士にご相談ください。
法律の知識を持っていない人
債務整理の知識を持っていない方は、交渉を任せられる任意整理がおすすめです。債務整理の知識がなく、特定調停をしようとすると、手続きや交渉に至るまで手間がかかり、すばやい債務整理や大幅な借金の減額は期待できないでしょう。
自己破産や個人再生の特徴やそれぞれの違い
特定調停と任意整理以外に、個人再生、自己破産といった債務整理の方法もあります。それぞれ特徴があり、異なる部分も多いです。特定調停と任意整理が成立せず、移行する場合もあるので、債務整理の知識として、個人再生と自己破産も把握しておきましょう。
個人再生
個人再生は、民事再生とも呼ばれる債務整理の方法で、住宅などの財産を維持したまま、借金を減額することができます。住宅などの財産が事業などに関わり、自己破産すると継続できない場合などに効果的な方法です。
返済義務はあるので、その点特定調停と任意整理と共通しています。減額幅には大きな違いがあり、多額の借金を抱える人にとっては返済を大きく減らし、生活・事業を立て直せる可能性が高いです。
自己破産
自己破産は、一切の返済義務を免除する手続きです。その代わり、一定以上の価値がある財産を失うので、個人再生と財産の取り扱いで違いがあります。また他の債務整理と違って、手続きの決定まで資格制限・職種制限があることにも注意が必要です。
特定調停・任意整理は本人だけで手続きできるのか
特定調停と任意整理はどちらも本人だけで手続きすることができますが、任意整理については弁護士・司法書士に依頼するのが一般的です。
特定調停は、債務整理の中でも最も簡単な手続きであり、個人で行うことができます。書類作成の手間があることや過払い金を請求できないことなどデメリットも理解した上で、本人だけで特定調停の手続きを行ってみましょう。
特定調停は家族や保証人には影響があるのか
特定調停の影響は家族か保証人かで異なります。
家族にはそもそも返済義務がないので、特定調停の影響はありません。ただ、保証人は返済義務があり、特定調停の効力が及ばないので、請求が行ってしまうなど影響があります。突然の請求は保証人に迷惑をかけ、関係を悪化させるかもしれません。あらかじめ特定調停を行うことを伝えておきましょう。
特定調停・任意整理は不成立になる場合があるのか
特定調停と任意整理は、交渉に折り合いがつかなければ不成立になる場合もあります。その場合、個人再生や自己破産に移行することになります。成立を争う訴訟を起こす選択肢も考えられます。
特定調停・任意整理は借金理由を問われるのか
自己破産をする場合には、ギャンブルや浪費など借金理由によっては認められない場合があります。特定調停や任意整理については、借金理由は問われないので、それが原因で債務整理ができないことはありません。
特定調停・任意整理で悩んだら、まず弁護士に相談
本記事では、特定調停と任意整理の共通点や違い、メリット・デメリットなどをご紹介しました。
特定調停と任意整理は、借金を話し合いで減額するという共通点があるものの、裁判所を介するかや取り立てが止まるタイミング、手続きの費用など多くの違いがあります。
現状、個人で行う手間や成立しないケースが増えている特定調停は減少傾向で、任意整理が選択される場合が多いです。手間をかけたくない方や時間がつくれない方、法律知識がない方は任意整理に適しています。
もし特定調停と任意整理どちらがよいのか、答えが出ずに悩んでいる方は、まず弁護士などの専門家に相談を行いましょう。あなたに合った債務整理を提案し、借金の軽減実現に導いてくれるはずです。