特定調停

特定調停の費用は安い?弁護士に依頼する場合との比較・検討が必須

債務整理を行うためには、手続きに費用がかかります。任意整理や個人再生、自己破産は弁護士などに依頼するのが一般的で依頼費用が必要です。特定調停は、弁護士なしでもできる債務整理であり、少ない費用で債務整理を進めることができます。

ただ、弁護士なしでできるものの、個人で行うには書類作成など手続きが煩雑で難しい場合もあるでしょう。その場合は、弁護士に依頼することも可能です。

本記事では、特定調停の費用について、個人で行う場合の費用相場と弁護士に依頼する場合の費用相場を解説します。弁護士費用については細かく料金体系を解説するので、特定調停の方法で迷っている方はぜひ参考にしてみましょう。

目次

特定調停はどのような債務整理?

特定調停の費用を紹介する前に、特定調停がどのような債務整理であるかを理解しておきましょう。特定調停とは、任意整理や個人再生、自己破産に次ぐ、債務整理の方法です。任意整理と共通する部分が多く、債権者との話し合いによる借金減額を目指し、生活・事業の立て直しを図ります。

借金の減額方法は、任意整理と同じで、引き直し計算を用いて、債務を法定金利で計算しなおすことで、過払い金を明確にします。過払い金部分を借金の元本から減額することで、元々の債務が整理されるという仕組みです。

他の債務整理とは違い、特定調停は弁護士なしで債務者本人が手続きできます。特定調停申立書などの必要書類をそろえて簡易裁判所に申し立てすることで、債権者との交渉を始められます。申し立て後は、2回の調停期日において、返済計画の検討や債権者との交渉を行い、条件が合致すれば、調停成立となります。弁護士に依頼するお金を捻出できない場合などに、有効な手続きです。

もう一つの特徴として、裁判所を介する手続きであるため、調停で決められた条項には法的な効力があります。調停成立を受けて作成される調停調書は、返済期間や月々の返済額などが記載されている債務者と債権者の約束を示す書類です。もし調停調書に記載された事項が破られれば、債権回収のために債権者は強制執行に動くことができます。給与や預金などの差し押さえをされるので、財産を失い、個人再生や自己破産に移行する必要が出てきます。自力で特定調停を行う際は、簡易裁判所で調停委員会と計画した案で返済できるのかを成立前に十分に検討しましょう。

特定調停は費用をおさえられるがデメリットにも注意

特定調停は、弁護士などに依頼せずにできるので、費用を安く抑えられるのが大きなメリットです。手続き費用は、債権者1社あたり数千円で済み、債務整理にかけるお金がない、債務整理にお金をかけたくない方にとっては、利用したい債務整理の方法でしょう。

確かに費用が安いことはメリットですが、デメリットも多いので、十分な検討が必要です。特定調停にあるデメリットを解説していきます。

煩雑な手続きを自力でしなくてはいけない

特定調停は、自力ですることで費用をおさえられますが、自力で行うには手続きが煩雑で、債務整理についての知識がないと苦労するでしょう。まず大変なのが、申し立てに必要な書類の作成・発行です。特定調停申立書や関係権利者一覧などの書類が必要で、債権者の情報や借入状況など細かく記載しなければいけません。

申し立て後には、2回に渡る調停期日に簡易裁判所への出廷を求められます。調停委員会との返済計画の検討、債権者との話し合いを経て、調停が成立して、やっと一連の手続き完了です。書類作成や手続きの流れがわかならい時は簡易裁判所に問い合わせればサポートを受けられますが、時間や手間がかかるので、すぐに債務整理をしたい人にとっては負担が多いでしょう。

取り立てのストップは申し立て後

債務整理を始めると、成立まで取り立てがストップします。特定調停は、他の債務整理よりもタイミングが遅く、申し立てが受理された時点で取り立てが止まります。自力で行う場合、書類作成に時間がかかる場合が多く、ただちにと取り立てを止めるのは難しいです。

厳しい取り立てで疲弊してしまったり、返済ができずに貸金業者との関係がくずれたりするなど、状況が悪化する危険性があります。その点、任意整理は、弁護士などに依頼した段階で取り立てがただちにストップするので、返済計画を練る時間や取り立てから逃れて自分を見つめなおす時間をつくれるでしょう。

過払い金請求は別途手続きが必要

上限金利に合わせて引き直し計算をすることで、過払い金が明らかになる場合があります。任意整理では、過払い金請求も同時に行えますが、特定調停では別途手続きが必要です。過払い金請求は、自分で行うなら手間が、依頼するなら費用がかかってしまいます。

債務整理にお金をかけられず特定調停を選択した方にとっては、大きな負担となるでしょう。手続きする時間や費用を用意できなければ、過払い金を取り戻せず、借金を大幅に減額するちゃんずを逃してしまいます。債務整理と合わせて過払い金請求をしたい場合は、任意整理が最適な方法です。

調停委員が専門家とは限らない

特定調停では、簡易裁判所が選任した弁護士資格を持つ調停委員が手続きをサポートしてくれます。ただ、調停委員が弁護士や司法書士などの債務整理の専門家とは限らず、債務者の不利に働く場合があります。

引き直し計算が間違っていて期待通りの減額ができなかったり、既に払い終えている債務を含めてしまっていたりするなど、ミスがあるかもしれません。また債務状況・経済状況を考慮して返済計画を立てるとき、収入-返済=生活費といった無理のある計画になる可能性もゼロではありません。医療費や貯蓄なども入れた余裕のある計画が理想ですが、債務整理の知識がないと気づきにくいでしょう。調停委員の提案を自分で見直すことも大切です。

債務の金利によっては減額を期待できない

債務の減額幅を計算するときに、引き直し計算を行いますが、元々の債務の金利によっては減額を期待できない場合もあります。利息制限法では借入金額に応じ、借金が10万円未満なら上限金利は20%、借金が10万円~100万円未満なら上限金利は18%。借金が100万円以上なら上限金利は15%と定められています。

引き直し計算は、15~20%以上を超えた金利を上限金利に合わせて、差額を算出する計算方法です。上限金利を超える借入を行っていれば減額可能ですが、上限の範囲で借入を行っている貸金業者が以前より増えていると言われています。そのため、ほとんどの減額されない場合も考えられます。

交渉が長引くと遅延損害金を請求される

特定調停は債権者との話し合いによって減額を交渉する手続きであり、希望が合わず長引くこともあります。債権者にとっては、申し立て後取り立てがストップしているので、本来の返済が行われていない期間が延びることになります。

特定調停で交渉が長引いた場合、債権者から遅延損害金を請求される場合があります。遅延損害金によって、かえって借金が増える可能性があるので、交渉の不調には注意が必要です。実際、特定調停は申し立て件数・成立件数が減少傾向にあり、成立が難しい債務整理とも言えます。

納得して特定調停を進めるには弁護士に相談しよう

特定調停のデメリットの中でも、気になるのが煩雑な手続きの手間です。法律知識がないとスムーズな手続きが難しく、申し立てに時間がかかり、取り立てもすぐに止められません。そこでおすすめしたいのが、弁護士への依頼です。弁護士に依頼することが費用がかかるものの、すばやく手続きを済ませるためには有効な方法と言えます。特定調停を弁護士に依頼するメリットをご紹介します。

面倒な書類作成を任せられる

特定調停に必要な書類を作成するのは、自力で行うには手間のかかる作業です。自分や債権者の基本情報だけでなく、経済状況や債務状況など、債務に関わるさまざまな情報を把握・整理して記載しなければいけません。法律の知識があまりない方や事務作業が苦手な方にとっては、より骨の折れる作業となるでしょう。

弁護士に特定調停のサポートを依頼すると、面倒な書類作成を任せることができます。法律のプロであり、的確かつすばやい書類作成が実現されるはずです。自力でやるよりも間違いないので、書類作成に不安がある方は、弁護士への依頼を検討してみましょう。

手続きの時間を取れないときに便利

書類作成と同じくネックとなるのが、手続きに簡易裁判所への出廷を求められることです。簡易裁判所へは平日にしか出廷できませんが、最低2回の出廷を求められます。仕事が忙しい人や介護などで家をあけられない人にとっては手続きを進めることが難しくなります。

弁護士は、書類作成だけでなく、手続きも任せることができます。調停期日に都合がつかないときやどうしても出廷できない事情がある場合は、弁護士にお任せするのが得策です。

個人で行う場合の特定調停の費用相場

特定調停にかかる費用をまず個人で行う場合から見ていきましょう。特定調停の費用の内訳は、印紙代と郵便切手の2つです。特別調停申立書には、収入印紙を貼り付ける必要があり、1社あたり1枚500円が印紙代としてかかります。受理後の書類送付のために、裁判所に予約郵便切手を納める必要があり、1社あたり420円ほどかかります。郵便切手代を簡易裁判所によって異なるので、申立てを行う裁判所に確認しましょう。

その他にかかる費用は、申立てに必要な住民票や戸籍謄本などの発行費用や簡易裁判所までの交通費などがあります。合計しても数千円なので、費用をおさえて債務整理を始めることが可能です。

弁護士に依頼する場合の特定調停の費用相場

弁護士に依頼することで、書類作成や手続きを一任できたり、手続き中にアドバイスをもらったりできるなど、メリットが多いです。ただ、便利な反面、弁護士費用は気になるところです。

特定調停の弁護士費用は大きく分けて、法律相談費用・着手金・基本報酬の3つがあります。法律相談費用は、特定調停を行う前の相談にかかる費用です。法律事務所に相談する場合は、30分〇円といった料金体系が多く、30分5,000円が相場と言われています。決して安いとは言えないので、相談費用を節約したい方は、無料相談を行っている法律事務所や法テラスなどを利用しましょう。

着手金は弁護士が債務整理に着手するためにかかります。債権者1件あたり2万円~4万円程度が一般的です。基本報酬は、債務整理に成功した場合にかかる費用で、2万円ほどが相場と予想できます。依頼する弁護士によって、費用にバラつきがありますが、最低1件4万円ほどで、交渉する債権者が増えるほど費用は多くなります。

特定調停にかかる着手金とは

特定調停の弁護士費用に含まれる着手金を詳しく見ていきましょう。着手金は、弁護士が依頼に取りかかるために必要な初期費用です。特定調停が成立するしないに関わらず、まず最初に支払う必要で、債権者1件あたり2万円~4万円ほどの着手金を求められます。

一括支払いを求める場合が多く、経済状況によっては依頼が難しいでしょう。その場合は、分割払いができる弁護士を探す必要があります。原則一括払いの弁護士でも相談によって分割払いできることもあるので、まず聞いてみることが大切です。

また、債権者が多く着手金を払いきれない際、法テラスが立て替えてくれる場合があります。法テラスに分割払いする形で弁護士に依頼できるので、着手金を支払いやすくなるでしょう。

特定調停では減額報酬が適用される場合も

特定調停を弁護士に依頼するとき、相談費用や着手金、基本報酬の他に減額報酬という費用がかかる場合もあります。報酬が減額されるのではなく、借金の減額幅に応じて報酬が発生します。多くの弁護士・法律事務所では、減額した金額の5%~10%程度の減額報酬を請求することが多いようです。例えば、100万円の減額に成功した場合は、安い場合でも100万円の5%である5万円前後が減額報酬となります。

弁護士・法律事務所の中には、減額報酬を設定していないこともあります。減額報酬があると、せっかく借金が減額されても費用が発生するので、ない方がありがたいはずです。減額報酬なしの弁護士・法律事務所が見つかると、弁護士費用の節約が実現されるでしょう。

特定調停にかかる基本報酬とは

特定調停にかかる基本報酬とは、特定調停が成立したときに発生する費用であり、成功報酬とも表現できます。基本報酬のある法律事務所を選ぶと、着手金に加えて数万円かかるので、注意が必要です。

実際は、基本報酬がかからない弁護士・法律事務所が多くなっています。着手金や減額報酬だけで済ませられるので、基本報酬のかからない弁護士・法律事務所を優先的に探してみましょう。

特定調停の費用をシミュレーション

個人で行う場合と弁護士に依頼する場合の費用を参考に、実際の費用をシミュレーションをしてみましょう。条件として、借金の減額幅を100万円に設定します。弁護士費用は基本報酬がある場合、減額報酬がある場合など、条件ごとにご紹介していきます。

まず個人で行う場合の費用をシミュレーションすると、

  • 印紙代:1社あたり500円
  • 郵便切手代:1社あたり420円
  • その他費用:数百円

合計:1社あたり1,000円程度となります。弁護士費用よりも安く、債権者が複数いたとしても、費用をおさえて債務整理することができます。

次に、弁護士に依頼した場合をシミュレーションしてみましょう。

【減額報酬・基本報酬あり】
  • 着手金:1社あたり2万円~4万円
  • 基本報酬:1社あたり2万円
  • 減額報酬:100万円×5%=5万円

合計:1社あたり最大11万円

【減額報酬あり・基本報酬なし】
  • 着手金:1社あたり2万円~4万円
  • 減額報酬:100万円×5%=5万円

合計:1社あたり最大9万円

【減額報酬なし・基本報酬あり】
  • 着手金:1社あたり2万円~4万円
  • 基本報酬:1社あたり2万円

合計:1社あたり最大6万円

弁護士依頼する場合はの目安として1社あたり最大11万円ほどが必要です。減額報酬や基本報酬が設定されていない場合は、費用が安くなるので、弁護士選びの基準にすると費用を節約できるでしょう。

特定調停に必要な書類とは

特定調停にかかる費用を確認したところで、申し立てに必要な書類もおさえておきましょう。必要な書類は以下の通りです。

  • 特定調停申立書 2部
  • 関係権利者一覧表
  • 財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料

特定調停申立書は簡易裁判所で受け取ることができ、申立人と債権者の基本情報や申し立て内容を記載します。次に関係権利者一覧表ですが、債権者ごとに債務額や残高などを記載する書類です。

3つ目の財産の状況を示すべき明細書その他特定債務者であることを明らかにする資料は、給料明細や源泉徴収票のコピーなどの明細と、債務状況や交渉の進捗などをまとめた特定債務者の資料等が当てはまります。

それぞれ基本情報以外に債務状況の記載が求められるので、特定調停を検討している方は、あらかじめ債務を把握・整理しておくことが大切です。

個人と弁護士などの専門家がする特定調停にある違い

特定調停を個人で行う場合は、時間や手間がかかるものの、手続きの費用を節約できるのが一番のメリットです。手続きにお金をかけられない人にも利用しやすい債務整理でしょう。

一方、弁護士などの専門家に依頼する場合は、費用と引き換えに、手続きの手間や時間をなくすことができます。また個人とは違い、法律のプロであり、債権者との交渉においても有利に進められるでしょう。

特定調停をどのようにするべきか悩んでいる方は、安く済ませたいのか、手間をかけたくないのかで選ぶのがおすすめです。本記事で紹介した個人・弁護士の特定調停費用やシミュレーションを参考にして、自分に合った方法で特定調停を行いましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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