自己破産

自己破産ができる条件とは?免責許可を得るまでにすべきことを徹底解説!

自己破産はすべての人ができるわけではなく、自己破産ができる条件はいくつか存在しています。本来自己破産は借金がゼロになり、人生をやり直すための手段です。しかし、自己破産の条件を設けないと意図的な自己破産を認めてしまうことになります。そうなると金融機関にはただ不利な状況になってしまうので、自己破産をするためには条件がもうけられています。はたして自己破産をするための条件とは、どのようなものなのでしょうか。

目次

自己破産が認可されるための2つの条件とは

自己破産が認可されるためには、以下の2つの条件を満たさなければなりません。

  • 支払いが不能な状態であると認められる
  • 免責不許可事由に該当しない

この2つの条件を満たして、はじめて裁判所は自己破産を認めます。

自己破産はそもそも借金をしてしまった人に対して、人生をやり直す手段として使われます。しかし、すべての人に自己破産を認めてしまうと、自己破産の制度を悪用されてしまう可能性があります。たとえば、借金の返済ができる状態であるのに、自己破産を認めてしまっては金融機関が一方的に損してしまいます。そのようにさまざまな理由から、自己破産を認めるための条件がいくつかもうけられています。

また、自己破産をするときには、自己破産をするための書類を記載しなければなりません。自己破産の書類にはなぜ自己破産をしなければならないのか、借金をした原因は何だったのかといったことを伝えなければなりません。そして書類に記載された内容をもとに、裁判所は自己破産を認可するかどうか決定します。そのため自己破産を裁判所に認可してもらうためには、書類をしっかり作成しなければなりません。自己破産の書類は自分でも作成できますが、弁護士に依頼して作成してもらう方法もあります。弁護士は自己破産の書類作成に慣れていますので、自己破産を認可してほしいのであれば弁護士に依頼したほうがいいでしょう。

支払い不能な状態ってどんなこと?

裁判所に自己破産を認可してもらうためには、自身が支払い不能な状態であることを証明しなければなりません。支払い可能な状況であると認められるのは、以下のような状況の時です。

  • 月々の返済額と収入額を見比べて、支払いができる余裕がある
  • 資産を換金すれば借金の返済ができる

たとえば借金の返済を終えても毎月貯金ができる人であれば、継続して返済ができる状態です。裁判所は自己破産を積極的に認可するのではなく、あくまで最終手段として位置付けています。そのため収支状況に余裕がある状態であれば、自己破産が認可されることはありません。こうした条件があるので、自己破産は所得水準が低い人に対して認められる傾向があります。所得水準が高い人であれば、金融機関に交渉して月々の返済を減らす任意整理という手段もあります。収入が多いのであれば、自己破産をしなくても借金の返済ができるとみなされる可能性があるということですね。

また自身に資産がある場合も、自己破産の認可はされないことがあります。たとえば借金が300万円あり収入がなくても、500万円の価値がある不動産を所有していたとします。この場合不動産を売却すれば借金が返済できるので、自己破産は認められません。このような人の自己破産を認めてしまうと、意図的に借金して自己破産をすることが可能になってしまうからです。そのため不動産・車・債券など換金可能な債権を持っている場合、自己破産が認可されないことがあります。

このように裁判所は自己破産をする条件として、その人が支払い不能な状態にあるかどうかを判断基準としています。その調査のために自己破産時には現在の収入や資産状況を、すべて裁判所に開示しなければなりません。自己破産を考えている人は、自分の収入や資産状況がどのような状態なのか一度考えてみましょう。

免責不許可事由ってどんなものがある?

自己破産をするための条件として、支払い不能な状態であることと免責不許可事由であることが挙げられます。免責不許可事由とは借金をした原因が、自己破産をするに値するかを判断するために作られています。自己破産を認めるということは、自己破産後に生活を立て直すことが条件です。しかし免責不許可事由に該当している人は、生活を立て直すことができるかどうか判断が難しいと思われてしまいます。

たとえば免責不許可事由の一つに、ギャンブルで借金をしたことという条件があります。ギャンブルには依存性があり、ギャンブルで作った人の自己破産をすべて認めてしまうと、自己破産後またギャンブルにのめり込んでしまうことがあります。自己破産後はクレジットカードやカードローンとしばらく契約できないので、自己破産後もギャンブルにのめり込んでしまうと、闇金に手を出したり最悪の場合命を絶ってしまう可能性もありますね。そうした事態を防ぐため日本では免責不許可事由を決めており、それに該当する人は自己破産をする前に審査をすることになっています。

自己破産を検討している人は、自分が免責不許可事由に該当しているかどうかあらかじめチェックしておきましょう。

免責不許可事由のまとめ

それでは免責不許可事由とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。免責不許可事由に該当するのは主に以下の8項目です。

  • 財産隠しなど債権者の利益を妨害する行為をした(財産隠し)
  • クレジットカード現金化をおこなった
  • 特定の債権者に有利な返済をした(偏頗弁済)
  • ギャンブルや浪費などで借金を作った(浪費行為)
  • はじめから自己破産をするつもりだった(詐欺行為)
  • 債権者名簿や債権者一覧表に嘘の情報を記載した
  • 裁判所の調査に対して嘘をついた
  • 過去7年以内に自己破産をしている

クレジットカードの現金化とは、クレジットカードのショッピング枠を利用して現金を手に入れる行為です。クレジットカードにはショッピング枠とキャッシング枠があり、ショッピング枠は買い物をするための枠です。しかし、ショッピング枠で購入した商品を意図的に換金するクレジットカード現金化は、自己破産の免責不許可事由に該当し厳しくジャッジされます。クレジットカード現金化はクレジットカード会社の規約にも違反するため、クレジットカード会社から契約を切られてしまうこともありますね。借金の返済が苦しくなるとクレジットカード現金化に手を出したい誘惑にかられることがありますが、自己破産のことを考えるのであれば絶対手を出してはいけません。

また、ギャンブルや浪費で作った借金には、株式投資やFXで作った借金も含まれます。株式投資やFXなどの行為は100%儲けられるものではなく、失敗したときはお金がマイナスになってしまう行為です。そのためこうした行為をするということは自己責任ということで、自己破産の免責不許可事由に該当してしまいます。世の中には副業ブームや投資ブームがありますが、それらはあくまで自分で責任がとれる範囲ですべきことです。借金をしてまですべきことではないので、慎重に対応しましょう。

免責不許可事由から読み取れるポイントととしては、嘘をついたり詐欺行為をしようとすると免責不許可事由に該当するということです。自己破産は認可されると借金がなくなるので、人生をやり直すための手段でもあります。そんなときに嘘をついているということは、自分の人生をやり直す手段を自ら棒にしてしまう行為ということ。そのため自己破産をするときには、書類への記入や裁判所からの質問には、素直に答えましょう。後ほど詳しく解説しますが、日本の場合免責不許可事由に該当していても、自己破産が認められるケースがあります。しかし免責不許可事由に該当することや、自己破産時に提出する書類に嘘が記載されていたことが発覚した場合、せっかく認められるはずだった自己破産が認められないこともありえます。こうした事態を防ぐためにも、自己破産時には正直で誠実な対応が求められますよ。

また一度自己破産をすると、その後7年間は自己破産ができません。これは自己破産をすることは簡単なことではなく、人生をやり直すために今後頑張りなさいというメッセージでもあります。自己破産後はクレジットカードやカードローンともしばらく契約できないので、自分の力で人生をやり直さなければなりません。ほしいものがあってもお金を貯めて買わなければならないので、しばらくの間は我慢しなければならないこともあります。しかし本来はそうした状況が正常であり、借金をただひたすらしていてはいつまでも生活はよくなりません。自己破産をするときには、今後の生活を立て直す覚悟をもって、手続きを進めていきましょう。

自己破産で免責不許可になる割合について

先ほど自己破産をするときには、免責不許可事由に該当していないことが条件であることを解説しました。それでは実際免責不許可になる割合はどれくらいなのでしょうか。

日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会が公開している2017年破産事件及び個人再生事件記録調査によると、免責不許可事由に該当していても、9割以上の人に裁量免責が認められて自己破産ができたというデータがあります。つまり日本では免責不許可事由に該当していても、自己破産が認められるケースが多いということです。もちろん免責不許可事由に該当している場合、裁判所が自己破産をさせてもいいのか調査をおこないます。そのうえで免責不許可事由に該当していても、自己破産が認められるケースが多いということですね。

ギャンブルなど浪費で作った借金の場合

免責不許可事由の中には、浪費やギャンブルで借金を作ったことが記載されています。実際先ほど紹介した日本弁護士連合会でも、自己破産を申請した人のうち15%ほどがギャンブルや浪費で作った借金が原因で自己破産の申請をしています。その他の理由を見てみると生活費が足らなくて自己破産をした理由がもっとも多く、医療費・失業・教育資金などある意味自分ではどうしようもないことが理由で自己破産をしている人もいます。

こうした理由に比べるとギャンブルや浪費は自己責任の部分が多そうですが、日本ではギャンブルや浪費での借金でも裁量免責が認められることがあります。裁量免責とは自己破産の手続きを担当した裁判官が、自身の裁量で自己破産を認めることです。具体的には借金をしたことを反省して、今後生活を立て直していく意欲が見られると、裁量免責で自己破産が認められるケースがあります。

裁量免責は裁判官の判断ではありますが、裁判官はこれまでの判例をもとに判決を出すことが多いです。そのため免責不許可事由に該当していても、9割以上の人に自己破産が認められています。ギャンブルや浪費で作った借金でも、対応をしっかりすれば自己破産が認める可能性は十分あります。

ギャンブルで借金を作った場合の手続き

それでは実際ギャンブルで借金を作った人が自己破産をする場合、どのような手続きがおこなわれるのでしょうか。

まず前提としてギャンブルで借金を作った場合、自己破産の免責不許可事由に該当しています。自己破産は自己破産の手続きを開始すると、同時に破産事件が廃止になる同時廃止と、破産管財人によって調査がおこなわれる管財事件という2つに分けられます。免責不許可事由に該当している人が自己破産をする場合、後者の管財事件に分類されることが多いです。ギャンブルや浪費で借金を作った場合、本来であれば自己破産が認められない免責不許可事由に該当しているので、管財事件として丁寧に調査をするというのが日本の自己破産におけるやり方です。

管財事件の場合、裁判所から任命された破産管財人が借金を作った原因や申立人の財産状況を詳しく調査します。同時廃止は裁判所に支払う予納金が1万円~3万円ですみますが、管財事件の場合には20万円以上です。期間も管財事件の方が長いので、同じ自己破産でも負担は大きく違います。ちなみに管財事件の中でも通常管財と少額管財という、2つの手続き方法があります。ギャンブルや浪費の場合個人が多いので、少額管財で手続きが進むことも多いです。

ただし、少額管財で手続きを進める場合、弁護士に依頼することが必須です。管財事件は調査が必要なのですが、弁護士であれば書類や財産の調査が正確におこなわれていると判断されるためです。通常管財と少額管財では、裁判所に支払う費用やかかる期間が大きく異なります。もちろん弁護士をつけた場合弁護士費用はかかりますが、手続きがスムーズにいくので弁護士に依頼したほうが確実でしょう。弁護士費用は分割支払いできる弁護士事務所も多いので、自己破産成立後支払っていくこともできます。

また、ギャンブルでの借金を隠すことは、絶対にしてはいけません。ギャンブルでの借金は免責不許可事由に該当しますが、同様に借金の理由で嘘をつくことも免責不許可事由に該当します。そしてギャンブルと申立書に嘘をつくことであれば、嘘をついたことのほうが裁判所の印象は悪いです。どちらも免責不許可事由に該当するのですが、自己破産が生活の立て直し目的で制定されていることを考えると、嘘をついている人が今後生活を立て直せるかというとそう受け取らない人が多いです。日本の自己破産の傾向からも、ギャンブルでの借金でも自己破産が認められる可能性は十分あります。そのためギャンブルで作った借金であっても、それを隠さずに話した方がよいといえます。

ちなみにギャンブルに限らず自己破産の申立書や破産管財人との面談で嘘をついても、嘘はばれる可能性がかなり高いです。自己破産の申立書には借金をした理由を記載しなければなりませんし、破産管財人や裁判官は申立書の精査をおこないます。破産管財人や裁判官は何件もの自己破産を対応していますし、嘘の記載があればすぐにばれてしまいます。嘘がばれた場合裁量免責をおこなうに不十分だと判断される可能性が高く、自己破産ができなくなってしまいます。先述したように日本では免責不許可事由に該当していても、実際は自己破産として認められる案件が9割以上です。もし嘘をついたことがばれた場合、正直に話していれば認められた自己破産が認められない可能性もあります。こうした事態を防ぐためにも、自己破産の申立時に嘘をつくことはやめましょう。

借金をした理由は自己破産時重要な項目

自己破産をするとき、借金をした理由というのはかなり重要な項目です。なぜなら自己破産は生活を立て直しを目的にしており、その人が生活を立て直すつもりがあるのかどうか調査する必要があるからです。借金をした理由で嘘をついている人は、今後の生活でも嘘をつく可能性が高いです。そうなると自己破産の目的である生活の立て直しができないと判断されるので、自己破産が認められません。そのため自己破産の申し立てをした後、弁護士・破産管財人・裁判官はみな借金をした理由を調査し、今後どのように生活を立て直していくのか話していきます。

借金をした理由に間違いがないか確認するため、弁護士・破産管財人・裁判官はお金の動きを調査します。銀行口座でのお金の出入りはすべて提出しなければなりませんし、どの金融機関からいくら借金をしているのか、毎月のお金の出入りはどうなっているのかといったことが調べられます。意図的な自己破産を防ぐためにも、お金の流れはかなり細かく精査されます。そのため借金をした理由で嘘をついても、ほぼ間違いなく嘘がばれますね。

自己破産の申立てをするときは、弁護士・破産管財人・裁判官が嘘をつかないことを念を入れて確認します。そのため自己破産の手続きの中で、嘘をついていることがわかると自己破産が認められない可能性がかなり高いです。日本の自己破産制度には裁量免責という制度もあるので、嘘はつかないようにしましょう。

自己破産をするときは偏頗弁済に注意

自己破産の免責不許可事由の1つに偏頗弁済(へんぱべんさい)というものがあります。この偏頗弁済は知らず知らずのうちに実行してしまうことがあり、あらかじめ注意しておかなければなりません。はたして偏頗弁済とはどのようなものなのでしょうか。

偏頗弁済を一言で説明すると、支払い不能になった後に一部の債権者にのみ有利な返済をすること。たとえば金融機関への返済はストップしているけど、知り合いへの返済は継続していたという状態のことを指します。これだけを聞くと心情的に仕方がないのではと思うかもしれませんが、自己破産にはすべての債権者を平等に扱うという考え方があります。そのため借金があるのであれば、知り合いの個人であろうと金融機関であろうと平等に返済をしなければなりません。平等な返済をしていない場合、偏頗弁済とみなされ自己破産が認められない可能性があります。

それでは具体的に偏頗弁済について解説をしていきます。まず偏頗弁済がはじまる支払い不能になった状態とは、どのような状態を指すのでしょうか。実は支払い不能な状態とは具体的な定義があるわけではなく、いくつかの要素から総合的に判断されます。たとえば収入がなくてもお金を稼げるスキルや能力があるのであれば、それを支払い能力があるとみなすことがあります。支払期日に支払いができないのであれば支払い不能とみなされることが多いですが、近い将来やってくる支払いが明らかにできない状態が支払い不能であるとみなされることもあります。

ただし、自己破産の申し立てをした後に支払いをおこなうことは、偏頗弁済をしたとみなされることは決まっています。具体的には裁判所に自己破産の申立書を送った段階で、自己破産をする意思があるとみなされます。弁護士をつけて自己破産をする場合、弁護士から債権者に対して受任通知がおくられます。その時点で債権者は債務者への取り立てを禁止されますが、債務者も債権者に返済しないようにすることが大切です。もし勝手に返済をしてしまうと、偏頗弁済とみなされることがあるので対応は慎重におこないましょう。

それでは支払いが不能になった状態で、生活費の支払いが発生した場合はどうすればいいのでしょうか。具体的な例を挙げると、家賃や携帯電話代金といったお金は、支払わないと生活を送ることが困難になってしまいます。結論から言うと生活費の支払いは、支払いが不能になった状態おこなっても偏頗弁済とはみなされません。ただし滞納分の家賃や携帯電話代金を支払うときは、一度弁護士に相談したほうがいいでしょう。滞納分の家賃や携帯電話代金は生活に必要なお金でもありますが、債務でもあります。そのため生活費の支払いをするときは、一度弁護士に相談してからするようにしましょう。ちなみに税金・国民年金・国民健康保険などの支払いも、偏頗弁済にはあたりません。

ここまで偏頗弁済について解説しましたが、知らず知らずのうちに偏頗弁済をしてしまうことは十分にあり得ます。自己破産の手続きでは銀行口座のお金の流れを確認し、何にいくら使ったのかも調査されます。そのため特定の人や機関への返済つまり偏頗弁済をすると、破産管財人や裁判所からチェックが入ります。 そうなると自己破産が認められないことがあるので、偏頗弁済は絶対にしてはいけません。偏頗弁済を防ぐためには、自己破産の手続き中自分で判断して支払いをしないことが必要です。弁護士をつけている場合、弁護士から偏頗弁済について説明されますが偏頗弁済にあたる支払いかどうかは一度弁護士に確認しましょう。自分の判断で支払いをしてしまったがゆえに自己破産ができなくなってしまうと、とりかえしがつきません。

免責許可を得るためには弁護士に相談すべき

自己破産には免責不許可事由があり、免責不許可事由に該当してしまうと自己破産が認められません。こうした事態を防ぐためには、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談するといいでしょう。自己破産手続きを得意としている弁護士や司法書士であれば、書類の書き方や破産管財人への回答など自己破産手続きのサポートをしてくれます。書類の記入漏れによって免責不許可事由に該当してしまうといったことも防げますし、手続きもスムーズに進んでいきます。

また弁護士や司法書士に手続きを依頼することによって、裁判所からの印象がよくなることも事実。裁判所も専門家である弁護士・司法書士を信頼しているので、手続きがスムーズに進んでいきます。

もちろん自己破産手続きを弁護士・司法書士に依頼すると、費用は発生します。しかし 民事法律扶助制度によってお金がない人でも弁護士費用の分割支払いができるので、自己破産成立後分割でお金を支払っていくという方法もあります。確実に自己破産手続きを終わらせるため、法律の専門家に相談することは選択肢に入れておきましょう。

自己破産しても支払い義務がある非免責債権

自己破産をすると借金がなくなりますが、すべての支払いがなくなるわけではありません。免責の対象にならない支払いも存在しており、そうした免責のことを非免責債権と呼びます。

非免責債権には以下のようなものがあります。

  • 税金、年金、社会保険料など公的な支払い
  • 破産者の悪意・不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 子供の養育費や扶養義務にかかわる支払い
  • 従業員への給料
  • 破産名簿に掲載されていない債権

非免責債権の中で忘れがちになるのが、税金や社会保険料といった公的な支払いです。自己破産をしても税金や社会保険料の滞納分は、そのまま請求されてしまいます。公的な支払いを滞納していると最悪口座を差し押さえられて、強制的に支払わなければなりません。そのため自己破産をするときでも、税金や社会保険料など公的な支払いはするように注意しましょう。

こんな状況でも自己破産はできる?

Q.奨学金の支払いができず自己破産はできる?

A.奨学金も債務なので、奨学金が支払えないのであれば自己破産は可能です。

ただし奨学金の多くは、両親や親族が連帯保証人になっています。そのため本人が自己破産をしても、奨学金の支払いは連帯保証人に引き継がれます。もし奨学金の支払いが原因で自己破産を考えているのであれば、一度連帯保証人に相談をしましょう。

Q.医療費が支払えずに自己破産はできる?

A.医療費の支払いができずに自己破産をすることは可能です。

日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会が公開している2017年破産事件及び個人再生事件記録調査によると、自己破産をした人のうち約10%の人が病気・医療費が原因で自己破産をしています。病気や怪我で長期の入院を強いられると仕事もできず、自己破産をせざるを得ないという人が多いようですね。

生活保護と自己破産の関係性について

自己破産を検討している人の中には、病気や怪我などさまざまな原因で生活保護を考えている人もいるのではないでしょうか。自己破産を生活保護はそもそもまったく別のものなので、生活保護を受けていても自己破産をすることは可能です。しかし生活保護と自己破産をともにする場合、覚えておかなければいかないことが何点かあります。すでに生活保護を受けている人であれば問題はないのですが、自己破産の申し立てと生活保護申請の両方を考えている人はしっかり覚えておきましょう。結論としては生活保護を受けてから自己破産をしたほうが、支払う費用が少なくてすみます。順序を間違えると今後の生活にも大きく影響が出てしまいますよ。

まずは法テラスの利用についてです。法テラスとは日本司法支援センターの通称で、政府が資本金を出資している法律相談機関です。法テラスではさまざまな法律相談が可能で、自己破産をするときの相談も弁護士さんが乗ってくれます。法テラスでかかる弁護士費用については分割支払いが可能なので、手元にお金がなくても自己破産の相談ができる点がメリット。ただし法テラスで分割支払いできるのは弁護士費用のみなので、裁判所に支払うお金は別途用意しなければなりません。裁判所に支払うお金は一括支払いが基本なので、このお金はどうにかして用意しなければなりません。自身で支払いができればいいのですが、できない場合両親や親族に負担してもらうなどして支払いをしましょう。

また法テラスを利用するときは、収入や資産を客観的に示す利用の提出が必要です。会社員であれば源泉徴収票、個人事業主であれば確定申告書などが必要ですね。生活保護を受けている人であれば、生活保護を受けている証明になる資料の提出が必要です。生活保護を受けていることがわかれば、お金に困っていることがわかるので法テラスから支援が受けられる手続きが進んでいきます。

生活保護と自己破産どちらが先?

生活保護と自己破産両方の手続きを考えている人は、まず生活保護の申請からおこないましょう。そして生活保護の認可を受けてから、自己破産の手続きをすることをおすすめします。理由は生活保護を受けていると、法テラスでの支払いが免除されるからです。

これは法テラスが生活保護を受けている人に対しては、お金がないのでかかった費用の支払いを免除する仕組みがあるからですね。もちろん生活保護を受けずに生活できるのであれば、わざわざ生活保護を受ける必要はありません。しかし、人によっては病気や怪我などやむを得ない事情で、生活保護を受けなければならずさらに自己破産も重なるとお金は大切にしなければならないです。生活保護が認められてから自己破産手続きをすれば、弁護士費用が免除された上で自己破産が進められますよ。

こうした事情があるので、生活保護と自己破産両方の手続きをする予定の人は、まず生活保護の手続きからスタートしましょう。自身が働けない身体なのであれば、生活保護に頼ることは決して悪ではありません。生活保護と自己破産によって生活が立て直せるのであれば、社会制度はうまく活用すべきです。自分の生活を立て直すためにも、生活保護や自己破産といった制度をうまく活用しましょう。そして自分が働ける状況になったら改めて働く先を探して、自分で稼げるようになれば社会復帰ができるようになります。

自己破産をするとき注意すべき点

自己破産をするとき注意すべき点としては次の2つが挙げられます。

  • 免責不許可事由にあたらないか確認する
  • 裁判所や破産管財人に支払う費用が必要

この記事でも免責不許可事由について解説してきましたが、免責不許可事由に該当するとみなされると自己破産が認められません。特に偏頗弁済は自分では気づかないうちにしてしまうこともあるので、注意しましょう。

また自己破産が管財事件に該当する場合、裁判所や破産管財人に支払うお金が一気に増えます。同時廃止であれば裁判所に支払う費用は数万円ですみますが、管財事件の場合少なくとも20万円はかかります。裁判所に支払う費用がない人は、手続きがはじまる前までに積み立てることが一般的です。弁護士に相談して実際に自己破産手続きを開始するまでには、書類作成などで数カ月かかります。その期間中手続きを進めながら、裁判所に納める予納金を貯めて支払います。予納金の支払いについては弁護士に相談して、確実に納められるようにしましょう。

自己破産が認められなかったときの対応策

自己破産の申立てをしても、自己破産が認められなかった場合どのような対策をすればいいのでしょうか。自己破産が認められなかったときにとるべき方法は主に以下の2つです。

  • 即時抗告を申し立てる
  • 個人再生や任意整理をする

まず即時抗告をするケースです。即時抗告とは裁判所の判決に対して、異議をとなえ高等裁判所に不服の申立てをすることです。裁判で免責不許可が決定されてから2週間以内であれば、即時抗告で判決がくつがえる可能性があります。ただし、即時抗告で判定がくつがえるケースは、あまり多くありません。自己破産が認められなかった理由としては、免責不許可事由に該当するなど債務者側に落ち度があるケースが多いです。そのため即時抗告をするときは、判定がくつがえるに足る正当性が必要です。

自己破産が認められなかった場合、個人再生や任意整理によって借金の支払いを軽くするという方法もあります。自己破産と違って借金がなくなることはありませんが、月々の返済額が減額になるので支払い自体はかなり楽になります。個人再生は裁判所を介すことで借金の減額をおこなう方法、任意整理は債権者と直接交渉して借金の減額をおこなう方法です。いずれの方法にもメリット・デメリットがあるので、どちらを選ぶべきかは弁護士に相談して決めるといいでしょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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