自己破産

自己破産で残せる現金はいくらまで?

自己破産をするとすべての財産を放棄しないといけないわけではありません。 一定額以内の現金は自由財産となり、自己破産をしても没収されないのです。

では、いくらまでの現金であれば手元に残しておけるのでしょうか? この記事では、自己破産をしてもいくらまでの現金であれば残せるのか、預貯金はどう扱われるのかについて詳しく説明していきます。

また、現金や預貯金を意図的に隠すことのリスク、手持ちの現金と同時廃止の関係性についてもふれているので、自己破産を検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

自己破産で手元に残せる現金はいくらまで?

自己破産をすると一定額以上の価値がある財産は没収され、お金に換えた上で債務の返済にあてられます。

ただ、法律では自由財産というものが規定されており、自己破産をしても自由財産に該当するものであれば手元に残すことができるのです。

99万円以下の現金は自由財産として残せる

いくらまでの現金が自由財産になるのかというと、99万円までとされています。 99万円を超えるような現金を持っている場合、超過分は没収されますが、それ以下の現金は自由財産として残せるのです。

なぜ99万円までなのかを簡単にいうと、自由財産として残せる現金は、一般的な世帯の2ヶ月分の必要性経費(66万円)の1.5倍の金額と法律で決められているからです。

66万円に1.5をかけると99万円になります。 そのため、99万円までの現金であれば自由財産として残すことができるのです。

詳しくは破産法 第34条第3項、民事執行法 第131条、民事執行施行令 第1条を見れば分かるので、詳細を知りたい方はそれらの法律を確認してみてください。

現金には預貯金は含まれないので注意

99万円までの現金は残したまま自己破産できますが、注意すべきなのは預貯金の取り扱いです。 銀行に預けている預金、郵便局に預けている貯金は感覚としては現金のようなものですが、自己破産においては現金にはなりません。

例えば、手持ちは一切なく、99万円を銀行口座に預けている場合には、現金のように99万円の全額を残すことは難しいでしょう。

基本的には、20万円を超える財産は債権者の配当になります。 そのため、多くの裁判所では預貯金については20万円までしか残せないのです。

ただし、一部の裁判所では預貯金と現金の合計が99万円までなら残せるケースもあります。 その辺りは裁判所の運用によって異なるため注意してください。

自己破産の裁判は住んでいる地域を管轄する裁判所で行われるため、該当する裁判所がどのような運用をしているのかを調べましょう。

自己破産の直前に下ろした預貯金は現金にあたらない

預金、貯金が現金にあたらないとなると、できるだけ銀行口座からお金を下ろしておきたいと考えますよね。 しかし、自己破産をする直前に下ろしたお金は現金としては扱われないため注意が必要です。

銀行口座に50万円の預金があるとしましょう。 その全額を自己破産の手続きを開始する直前に下ろした場合、「50万円の現金」ではなく、「50万円の預貯金」という扱いになるのです。

ただし、自己破産の前に下ろした預貯金でも、「有用の資」に充てることは許されています。

有用の資とは、自己破産の手続きをしたり、生活をしたりする上で避けることができないようなお金の使い道のことです。

【有用の資の一例】

  • 自己破産の手続き費用
  • 税金の支払い
  • 生活費
  • 医療費 など

99万円を超える現金は自己破産した場合にはどうすれば良い?

もし99万円を超えるような現金を所持しているなら、自己破産をすると超過した分はどうすれば良いのでしょうか?

例えば、預貯金などはなく、100万円の現金だけを持っているとしましょう。 この場合、自由財産として認められている金額を1万円だけ超えてしまっています。

詳しくは後述しますが、債権者に分配するような財産がある場合には、財産の調査、分配を行う破産管財人が選出されます。 自由財産の範囲を超えた現金については、この破産管財人が用意した口座に自身、または代理人である弁護士が入金することになるのです。

自己破産しても残せる自由財産とは?

自己破産をすると所有している財産は処分、換価されて、債権者への配当に回されます。 ただ、前述の通り、99万円までの現金などの自由財産は残すことが可能です。

自由財産とは、本来であれば換価されるべきところを、破産者が自由に管理、利用することのできる財産を指します。

自己破産をして債務を帳消しにできても、すべての財産を没収されてしまっては生活できませんよね。 自己破産後に生活を立て直すためにも、必要最低限のものは残すことができるようになっているのです。

99万円以下の現金以外にも、自由財産に該当するものはいくつかあります。

99万円以下の現金

99万円以下の現金が自由財産になるのは、先ほどの説明の通りです。 その他の財産については20万円を超える価値があると処分の対象になりますが、現金の状態であれば99万円までは自己破産をしても保有できます。

前述の通り、預貯金については現金とは原則的に見なされないため注意しましょう。

差し押さえ禁止財産

現金以外にも、差し押さえることが禁止されている生活に必要な最低限の家具、家電は自由財産になります。

例えば、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、パソコンなどは自由財産になると考えて良いでしょう。

ただし、必要最低限というレベルを超えた高価なもの、同じ家電を複数所持している場合などは差し押さえられる可能性が高いです。

自由財産の拡張が認められたもの

99万円以下の現金、および差し押さえ禁止財産以外でも、申請をして裁判所が認めたものは自由財産として扱われます。

99万円以下の現金、差し押さえ禁止財産は一律に自由財産として認められるものなので、本来的自由財産と呼びますが、裁判所の判断で自由財産に含められる場合は「自由財産の拡張」といいます。

何でもかんでも申請をすれば認められるわけではありませんが、客観的に見て生活に必要なもの、経済的な自立に必要なものであれば、自由財産の拡張が認められる可能性が高いです。

実際の手続きでは、破産管財人と弁護士による協議によって決まっていくことになるでしょう。

自己破産後に取得した財産(新得財産)

自己破産をすると20万円を超える価値がある財産、99万円を超える現金は差し押さえになりますが、対象は自己破産の手続きを開始した時点で保有しているものに限られます。

つまり、自己破産の手続き後に新しく取得したものについては差し押さえの対象にはなりません。

このような財産を新得財産といい、手続き前に保有していた財産のようにいくらまでという制限はないので安心してください。

換価できない財産

自己破産によって処分が必要なものは、破産管財人によって「破産財団」という形で管理されます。 手続き開始時に所有していた財産は破産財団に含まれ、自由財産を除いては換価され、借金の返済にあてられるのです。

しかし、破産財団の中には、お金に換えることが難しかったり、処分するのに大きな費用がかかったりするものもあるでしょう。 それらは、破産管財人が放棄すれば、破産財団からは外れ自由財産になります。

自己破産の際に一定額以上の現金があると同時廃止にならない?

所有している現金の額は自己破産が同時廃止になるか、もしくは管財事件として扱われるかに影響します。

同時廃止と管財事件の違い

自己破産をする人の多くは分配できるような財産を所有していないため、自己破産の開始と同時に免責許可が下りる同時廃止という手続きになります。

一方、一定額以上の現金を有していると破産管財人が選ばれ、所有している財産などを調査された上で債権者へと分配されていくのです。 破産管財人が選出されるような自己破産の手続きを管財事件といいます。

同時廃止であれば、そもそも換価できるような財産、現金を持っていないので、差し押さえは行われません。 同時廃止の場合、持っている財産はすべて自由財産になると考えて良いでしょう。

破産管財人を立てて財産の調査をするのにも費用がかかるため、十分な財産を持っていないケースでは調査、換価処分する費用の方が高くなってしまうのです。

同時廃止にならないデメリット

自己破産が同時廃止になるか、管財事件になるかは申し立てをしてから決まります。

財産といえるようなものを持っていないのであれば同時廃止になる可能性が高いですが、実際に同時廃止、管財事件のどちらになるかは裁判官面接の際に伝えられるケースが多いです。

同時廃止にならない場合、自己破産の手続きに手間と時間がかかってしまいます。

繰り返しになりますが、同時廃止は手続きの開始と同時に免責が受けられるため、非常にスピーディに自己破産が完了するのです。 同時廃止ではなく、管財事件になると破産管財人による調査が行われるので、免責を受けるまでにはそれなりの期間がかかります。

また、費用面でも同時廃止よりも管財事件の負担の方が重くなります。 破産管財人に支払う報酬も自己破産をするための費用に含まれ、同時廃止よりも手続きにかかる費用は高額になるのです。 管財事件では自己破産の費用に予納金という項目があり、その中から破産管財人への報酬などがまかなわれます。

自由財産の範囲でも同時廃止にならないケース

99万円までの現金は自己破産をしても残せますが、自由財産の範囲であれば同時廃止になるとは限りません。

少しややこしいですが、自由財産になる基準額と同時廃止になる基準額は異なるのです。 では、いくらまでの現金であれば同時廃止として扱われるのでしょうか?

同時廃止になる基準は管轄の裁判所によって異なります。 裁判所によって50万円超、33万円以上などいくらまでなら同時廃止になるかのラインが違うのです。

また、20万円を超える換価すべき財産を持っている場合、処分される財産はなくても浪費などが自己破産の原因になる場合にも同時廃止にならない可能性があります。

いくらまでの現金であれば同時廃止になるかは裁判所によって異なるため、法律事務所で自己破産の相談をする際に確認してください。

自己破産で現金や預貯金を隠すのは違法?

「できるだけ財産を減らして同時廃止にしたい」、「没収されないように現金を残したい」と思うかもしれませんが、自己破産で現金や預貯金などの財産を意図的に隠してはいけません。 財産は破産管財人によって細かく調査され、財産隠しが分かると自己破産の免責が下りない、罪に問われる可能性があります。

財産隠しがばれると免責が受けられない

現金や預貯金などの現金を隠すということは、本来は換価処分されるべき財産を隠して、債権者の権利を侵害するということです。

隠したわけではなくうっかり申告が漏れてしまったというケースではなく、意図的に財産隠しをした場合には免責許可が下りません。

自己破産は手続きをしても免責許可が下りなければ、債務はそのままです。 財産隠しのように免責許可が下りないような理由を、免責不許可事由といいます。

これは、破産法の第252条 第1項を次のように記載されています。

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

引用元:破産法 第252条 第1項

同時廃止にしたい、自己破産後の現金を多く残したいという安易な理由で財産を隠すと、免責が下りずに借金の返済義務がなくならないので覚えておきましょう。

詐欺破産罪で罰せられることもある

自己破産の手続き中に財産隠しが発覚した場合には免責が下りませんが、もし免責許可の後に財産を隠していたことが分かったらどうなるのでしょうか?

実は、免責許可後に財産隠しが分かると「詐欺破産罪」で罰せられるケースがあります。 詐欺破産罪が成立すると、1ヶ月以上10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方が課せられます。

そもそも財産の存在を把握していなかったなどのケースであれば詐欺破産罪は成立しないでしょう。

ただ、意図的に財産を隠していたなら罰せられる可能性は十分にあるので、絶対に現金や預貯金、その他の財産を隠してはいけません。

財産隠しがばれる理由

破産管財人が選出されると資産目録が作成され、その書類に基づきお金の流れなどがチェックされます。 銀行の通帳などの提出も必要で、調査に協力しなかったり、嘘の説明をしたりしても免責不許可事由に該当するので注意してください。

銀行口座からお金を下ろして現金にすれば隠すことができそうですが、それでもお金の流れを調査すればばれる可能性が高いです。

通帳に預貯金を引き出した記録があるなら、その使途が問われるでしょう。 何に使ったのかが不明瞭であれば、使わずにどこかに隠しているのではないかと疑われてしまいます。

また、不動産、自動車、保険などの財産を所有していると税金や口座などに何かしらの記録が残ります。 例えば、不動産であれば固定資産税がかかりますし、賃貸物件として利用しているなら家賃収入が発生しているはずです。

以上のことはお金の流れを確認すれば詳細に把握されることなので、財産隠しは必ずばれるでしょう。

自己破産で残せる現金は99万円まで!実際の運用は裁判所ごとに異なるので注意

99万円までの現金は自由財産になるため、自己破産をしても手元に残すことができます。

自由財産に含まれない現金、預貯金、財産は破産財団に含まれ、管財人によって換価処分、債権者へ分配されます。

ただし、いくらまでの現金であれば同時廃止になるのかは、裁判所によって運用が異なるので注意してください。 現金を残すことができても、管財事件になるケースもあるのです。

いくらまでなら大丈夫かは自己破産を依頼する弁護士などに相談すると良いでしょう。

また、破産管財人による調査は綿密に行われるため、財産隠しはばれます。 現金や預金などを隠していたことがばれると免責許可が下りない、詐欺破産罪で罰せられるというリスクがあるので注意してください。

ルールに従って、弁護士や管財人の調査には素直に応じましょう。

弁護士法人きわみ事務所
代表弁護士 増山晋哉
登録番号:43737

昭和59年大阪府豊中市生まれ。平成21年神戸大学法科大学院卒業後、大阪市内の法律事務所で交通事故、個別労働紛争事件、債務整理事件、慰謝料請求事件などの経験を積み、平成29年2月独立開業。

きわみ事務所では全国から月3,500件以上の過払い・借金問題に関する相談をいただいております。過払い金請求に強い弁護士が累計7億円以上の過払い金返還実績を上げていますので、少しでもお困りのことがあれば無料相談をご利用ください。

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